
KYOTO
街を歩き、空気を拾う。
夕暮れの祇園から、宮川町へ。
そして、鴨川へ。
同じ街のなかで移り変わる、
光、湿度、人との距離、時間。
京都を歩いた記憶から、香りをつくりました。
01 / STREET
内と外、そのあいだ。
夕暮れの祇園に、灯りがともりはじめる。
人の声、石畳を行く足音。
舞妓の姿が通りを横切り、格子の向こうにも明かりが滲む。
昼とは違う華やぎが、古い町並みにゆっくりと重なっていく。
翌朝
そこから南へ、宮川町通を歩く。

四条から五条へと続く通りには、町家が軒を連ねる。
格子や簾の向こうには人の営みがありながら、
通りから見えるのは、ほんの一部だけ。
道は開かれている。
けれど、その内側へ容易に踏み込むことはできない。
華やかな世界がすぐそばにありながら、
そこには静かな境界がある。
見えるものより、見えないものの方が多い。
そんな距離を感じながら、再び北へ。
三条あたりまで来ると、
町家の連なりから少しずつ視界がひらけ、
街のすぐそばを流れていた鴨川が、風景の中心に現れる。
木と格子に囲まれていた空気から、
水と風のある場所へ。
同じ京都を歩いているのに、
人との距離も、光も、空気の密度も変わっていく。

02 / RIVER
川辺では、時間がほどける。
三条から鴨川へ。
建物のあいだを歩いていた身体が、
川に出た途端、ふっとひらかれる。
夏の強い光
川面から上がる湿った空気
日に熱せられた草と土
川辺に座る人
自転車で通り過ぎる人
水に足を入れる人
何をするでもなく、ただそこにいる人。
宮川町で感じた、内と外の境界
その緊張は、ここでは少しずつほどけていく。
人と街、人と人との距離も曖昧になり、
暑さのなかで、時間だけがゆっくりと伸びていく。
整えられた美しさとは違う、
無防備で、少し気だるい京都。

LIGHT / WOOD / POWDER / SHADOW
WATER / GRASS / SOIL / HUMIDITY
夕暮れの灯り。
白粉を思わせる、淡い粉香。
古い木と、格子の奥に残る人の気配。
朝の光に浮かぶ町家の輪郭。
そこから川へ出ると、
水の湿度、青い草、日に熱せられた土。
風が、それらを混ぜながら通り過ぎていく。
京都を象徴する何かを探したのではありません。
歩いているあいだに身体に残った、
小さな感覚を拾いました。
光。
木。
水。
草。
湿度。
そして、人との距離。
香りになる前の、京都の断片です。
04 / SCENT
空気の移ろいを、香りに。
夕暮れの華やぎから、
格子の奥に感じる静かな緊張へ。
町家のあいだを抜け、
川へ出たときの、湿った風と解放感へ。
京都を歩くと、
場所と時間によって空気の密度が変わります。
その変化を、香りの中にもつくりました。
一つの「京都らしさ」を再現するのではなく、
歩くなかで現れては消えていく感覚を重ねていく。
土地の香りは、
植物だけから生まれるものではありません。
光や湿度、人との距離、
そこで過ごした時間もまた、
その土地の香りになる。